藤島晃一さん
藤島晃一さんという方をご存知だろうか。
ブルースマンであり画家。四国の山奥に住んでいて、海外も頻繁に行っている。
この人のアルバムが、Spotifyで解禁されていたので、このタイミングで少しだけ紹介させてほしい。
彼の音源はもともと全国流通しておらず、ホームページからメッセージを送ることで買えるいわゆる自主制作盤しかなかったが、今はベスト盤"ベスト・通り過ぎれば風の詩"と"立ち止まれば"というアルバムがP-VINEからリリースされている。
ピーター・バラカン氏の書籍やラジオで紹介され、イギリスBBC放送でも取り上げられた。
彼の音楽はブルースの中でもいわゆるミシシッピデルタブルースと呼ばれる、主にアコースティックギターと歌のみで演奏される最初期のブルースのスタイルに近い。
リゾネーターギターと呼ばれる金属製のギターで、特に彼はスライドバーを駆使したプレイが多いようだ。
彼の歌を最初に聴いたときに度肝を抜かれた。僕はブルースが好きでもちろん音楽スタイル的には馴染んでいたものだったが、"くぐもっているが金属的"なスライドの音、内側から湧き出た呪いにも祈りにも取れるような声、そして日本語のリズムを殺さずに、かつまるで目の前に恐ろしいほどリアルな光景が見えてくる詩。
ドキュメンタリーの映像で、James Son Thomasというブルースマンの前で「You Gotta Move」を演奏したところ、「お前の曲じゃないだろう。日本人なのになんで日本語で歌わないんだ。」という言葉をかけられたというエピソードがあった。
何度もミシシッピに足を運び、貧困を目の当たりにして打ち砕かれ…そうした「旅」の経験が、今の彼の表現のスタイルを形作ったのだと思う。
だから彼のブルースは一つも見栄をはらない。
間違いなく自分の目に映ったものを歌っているのだ。
そして僕は、何度も心が震えた瞬間を思い出しながら、今自分が見ている景色を、今日もきちんと目に焼き付けるのだ。
ドキュメンタリー『通り過ぎれば風の詩』
『立ち止まれば』
https://open.spotify.com/album/4pWnZ0V0Vwij1JGeUJ8c73?si=0nSSkPfJSky-xzKlV2IuqQ